怖いのは死ではなく

少し眠気があったので、ソファに横になった。

涼しい風が窓から吹き込んでくる。秋の香りがする。

うとうとしていたら、急に体が動かなくなってきた。

心臓が痛い、苦しい、息ができない、苦しい、誰かを呼ばなきゃ、動けない、痛い、苦しい。

そのまま意識だけが続いて、苦しんで、日が暮れていく。

私はそのまま息ができなくなって、意識が遠のく。

夕日が差し込んでくる。

呼吸が止まり、意識がなくなり、目は開いたまま、この世界には肉体だけが残る。

一人暮らし、親はいない、毎日連絡を取り合う相手もいない。

そうして、1日、1週間、1ヶ月時がたち、腐った臭いが充満する。

お隣さんから異臭がすると大家さんに連絡がいく。

腐った私は発見され、死体処理のためにドロドロの体で移動されていく。

誰にも看取られない、ひとりぼっちの死。

19歳の頃から、たまに想像しては怖くなる。

死が怖いのではく、一人で誰にも気づかれず、この世から消えることが怖い。

そして、誰からも思い出されることがなくなるのが怖い。

生きていることに意味も意義もなくたっていいけど、

誰かの心の中に『私』が生き続けてほしいとも願ってしまう。

『あいつ、変な奴だったよな、思い出すだけで笑えるわ』

そんなんでもいい。

たまに思い出してほしい。

私の好きな小説の一つ、『ノルウェイの森』に印象的なセリフがある。

『私のことを覚えていてほしいの。私が存在し、こうしてあなたのとなりにいたことをずっと覚えていてくれる?』

直子のセリフ。

高校生の頃読んだ時、理解ができなかったこのセリフは、歳を重ねるごとに深く共感するようになった。

別に付き合ってる人でなくてもいい、結婚してなくていい、友達じゃなくてもいい。

今この文章を読んでいるあなたが、私という存在を心のどこかに置いておいてくれないだろうか。

私はそれだけで救われる。

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